志賀理江子の衝撃(ふたたび)
東京都現代美術館で開催中の、『さばかれえぬ私へ Tokyo Contemporary Art Award 2021-2023 受賞記念展』に行ってきました。
目当ては志賀理江子です。志賀理江子を初めて知ったのは、2019年に東京都写真美術館で開催された『ヒューマン・スプリング』でした。ものすごい衝撃でした。自分の中身が裏返ったような、世界の見え方が根本的に変わってしまったような衝撃。「自分は、絶対に何をやっても、こんな写真が撮れるようにはならない」と思いました。
で、志賀理江子のこれまでの作品集(『螺旋海岸』『Blind Date』など)を買い集めながら展覧会をずっと待っていたわけですが、ついに!という感じで、もうやられる覚悟を深く決めて、しっかり深呼吸をしてから見に行ったのです。
息ができなくなるような体験をしました。写真は大型作品《風の吹くとき》ですが、この作品の匂いを全く写せていません。当たり前だこんなもん撮れるかバカ。テーマは「震災と復興」で、
津波によって何も無くなった土地に「今だ」とばかりに集まった、
「惨事便乗型」の大資本の誘致活動は、私たちを圧倒しました
......
「復興」の歩みは、早まきの近代日本のデジャブのようだった*
というメッセージはストレートなものですが、表現の密度と得体の知れない力は見るものを圧倒します。これが、「Tokyo Contemporary Art Award」の受賞記念展で、「東京都現代美術館」で行われる展示だということに、震災後12年の自分の生活と感覚を見つめ直さざるを得ませんでした。
同時展示の竹内公太は「風船爆弾」がテーマ、こちらも素晴らしく、「消し去られつつある過去」について考えさせられる展示でした。
で、恐ろしいことにこの『さばかれえぬ私へ』、無料です。いま東京都現代美術館はディオール展が大盛況ですが(チケット取れなかった)、『さばかれえぬ私へ』のためだけに現美に赴く価値は十分すぎるほどあると思います。
とはいえせっかくなので、『MOTコレクション 皮膜虚実/Breathing めぐる呼吸』も観てきましたが、こちらもとても良かったよ。
最後に、ここ二ヶ月ほどの間に行った「展」をメモっておきます。
そろそろ年度が変わります。色々課題がありすぎて落ち着かない感じなのですが、まあ生き延びていきたいと思います。
*志賀理江子《風の吹くとき》より引用