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本業は大学教員で言語学の研究者。このブログは最近殆ど写真ばかり。「まっすぐ撮る部」「ズームレンズ使えないマン」「全日本絞らない党」あたりでやっている。

オンライン授業の記録(2020年7月)

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いつもの授業風景。自室、マンガだらけの本棚、ねこを抱いている。

勤務先大学は(変則)4学期制なので、4月からの「第1ターム」が昨日終わった。ここまですべてオンライン授業。まだ色々分からない。記録のために、この三カ月やったことを殴り書きしておく。


全体的な心がけ

1. 楽しむ

とにかく自分が授業を楽しんでいなければいけない、という点にプライオリティを置いた。授業で話していることは、とても面白いしとても大切で役に立つことなのだ、と自分に対して繰り返した。そして学生にそれを伝えることを忘れないように心掛けた。できるだけ笑顔をつくった。部屋で授業をやっているとねこが乱入してくるのだが、その時は積極的に脱線してねこの話をした。猫なで声も出した。

2. 減らす

授業でカバーする内容や課題の量を、これまでの年度より大幅に減らした。イメージとしては、一回の授業で取り上げる内容をいつもの半分にする(ただし解説は厚くする)、くらい。課題は簡単に短いものを、ただし毎回出す。Google FormsやGoogleドキュメントを使って学生とのやりとりを効率化した(後述)。

3. 呼びかける

学生に対して「呼びかける」ことを意識的に続けた。これを理解するためにはこの本がいいよ、この動画わかりやすいよ。このストレッチ動画いいよ。ヨガはいいよ。こないだ魚を買って捌いたよ。その他とにかくコミュニケーションのボールを投げ続ける。ボールが戻ってこなくても、「誰かが受け取った」感じがあれば十分。ゼミでは授業自体はZoomミーティングを使っていたが、呼びかけるためのチャンネルとしてSlackでワークスペースを用意して使っていた。


個別実践例

1.「ことばの世界」

どの学科でも履修できる「共通科目」。一年生がメイン。履修者は毎年300人以上。言語学の入門という位置づけ。例年は大教室での講義だった。

オンライン授業のプラットフォームはGoogle Classroomを使用。基本的な形態は、「オンデマンドの教材+ライブの質疑応答」。教材はまずスライド、そして「ポイント解説動画」。学生にはまずスライドを自分でノートにまとめながら読んでから解説動画を見るように指示してある。スライド枚数は40枚前後、例年の授業一回でカバーする内容を半分に減らしてから、解説を増やして枚数的に2/3くらいにしてある。解説動画はスライドの内容を網羅するのではなく、重要なポイントに絞って例を増やして説明したり、理解の再確認を促す作りで、長さは20分程度。

毎週簡単な課題を課している。その回の内容に関するT/Fや多選択肢問題を5問程度。課題のフォームには質問・コメント欄を設けてある。課題の問題はGoogle Formsの自動採点、質問・コメントにはフィードバックを書き込み、Classroomで成績をインポートしてから返却。

毎回の授業開始時間にその回の教材を公開するのだが、同時にYouTube Liveで「質問コメント回答コーナー」をやっている。前回の課題の質問・コメントで出てきたものをピックアップして回答・解説。一通り答えたら(大体20分くらい)、「ここからは雑談です、退出してもOK、ラジオみたいに聞きながら勉強するのもOK」とアナウンスして、あとは授業終了時間までずっと雑談をしている。ねこを見せたりとか、学生に質問を振ってチャットで答えてもらったりとか、チャットで出てきた質問に答えたりとか。

教室での雑談には色んなポジティブな効果があるとずっと思っていた。しかしオフラインの授業だと、講義しなければいけない内容があるので、雑談に割ける時間はどうしても限定される。オンライン授業になったことで、オンデマンド教材と自由参加の雑談時間を両立できるようになった。たぶんこれはオフラインに戻っても維持できて、その際はオンデマンド教材を授業前に配布する、いわゆる「反転授業」みたいな形になるのだろう。大教室でもsli.doなどのツールを使えば多分学生の声は拾えるし。

 

2. 「四年セミナー」

「英語学コース」のセミナーで必修科目。今年度は名詞に伴うジェンダーバイアス(「外科医」といったら男性が想定される、「看護師」といったら女性が想定される、みたいなこと)が、リアルタイムの言語処理にどのような影響を与えるのかを、自分たちで簡単な実験をやってみて検証する、という内容。

このタームは先行研究の理解のために論文(英語)を読んでいた。授業はZoom。最初の40分ぐらい、僕が論文の説明をする。iPadからGoodNotesで論文PDFを開き、盛んに書き込みを入れながら解説する。一通り解説を終えたら課題を提示。課題はその回読んだ部分の内容理解を問うもので、短く論述することが求められる。ここで学生はブレイクアウトルームに分かれて課題について相談をする。課題の答えは、学生が各自僕と共有しているGoogle Documentに記入し、次週までに僕がそれにコメントを返す。同一のドキュメントにどんどん書き足していく方式。これは提出された課題の「仕分け」が必要なく、フィードバックを返すときに非常に楽だった。

授業自体はZoomで行うが、Slackのワークスペースも用意し、そこで連絡を行うようにした。そのワークスペースには他のゼミの学生も参加しており、50人以上のメンバーがいる。授業関連連絡以外にも、#randomチャンネルに色々投げるようにしている(面白い動画とか)。

今期の授業はかなりスムーズに進み、課題の出来を見ても学生の理解度は悪くなかった。ただ問題は夏休み明け以降、「実験をつくって実施する」というプロセスをどのように実施するか。オンラインだと色々制限されるのはもちろんだが、仮に対面授業再開になったとしても、学生同士が密になるグループワークはできないだろう。これについてはどのようにやるのがベストなのか、明確な答えが無いまま手探りで進むしかない。

 

 

7月2日、今日の東京107人。夏休み明けも在京大学はキャンパスでの授業を再開できない可能性がどんどん高まっていく。残念だがやるしかない。このような状況でも大学をやっていくしかない。たとえオンラインでも大学生であったことが、その人生においてポジティブな経験となるように、できる限りのことを。

今欲しいのは、ちょっと毛色が違うコミュニケーションプラットフォーム。キャンパスにいる時に発生する、「言葉を交わすわけじゃないんだけど、他の学生が何をしているのかが見てわかる」を少しでも埋める何か。食堂にワイワイ人がいたら、その中の誰とも話さなくても、周りに人がいるということから得られる何かがあるのだ。今のネット上にあるツールって基本的に言語コミュニケーションを取る用途に特化していて、「他の人もいる空間に佇むだけ」がやりにくい。3D空間でアバター操作するみたいなのがいいと思うのだが、ないかなあ。


おまけ:機材メモ

カメラはFujifilm X100V。PCモニターとして使っているテレビの前に三脚を立てて設置している。カメラはBlackmagicのATEM Miniを通してPCに接続。ATEM MiniにはMacbook Airを繋いでスライドを出したりとか、iPad Proを繋いでGoodNotesを出したりとかしている。Zoomの画面共有よりもレイアウトに自由があるのがよい。マイクはマランツプロのMPM200U。ちなみに機材の殆どは研究室備品(PCやマイク)か別用途で購入していた私物(カメラや三脚)である。カメラ機材沼に浸かっていると、こういう緊急事態が起きたときに自分の分を確保した上で人に貸せるくらい三脚が部屋に転がっていたり、カメラが余っていてねこカムを設置できたりするので便利。沼はいい。