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bluelines

女子大教員。大学教育・言語・ねこ・写真とカメラなどについて。

「ボケる」とはどういうことか

写真・カメラ

iPhoneを6 Plusにアップグレードしたので、ちょっと写真を撮ってみたり。

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久しぶりにスマホで写真を撮って、「ボケないなあ」と感じました。普段使ってるカメラの感覚だと全くボケてくれません。そんなこんながきっかけで、このエントリでは、そもそも「ボケる」とはどういうことかについて解説を試みます。

 

1. ピントは面で合う

デジカメを構えてシャッターを半押しすると、液晶やファインダーに小さな枠が点滅して「ここでピントが合いましたよ」と教えてくれます。あれ、実はちょっとミスリーディングだと思っています。あれを見ていると、ピントは画面上のどこか一点に合うものだ、と思ってしまうかもしれません。

ピントは面で合います。イメージとしては、構えたカメラのセンサーに平行な薄い面があって、その面に接しているものにピントが合う、という感じです(厳密には平行ではないのですけど、それは置いておきます)。「ピントを合わせる」とは、このピント面を前後に移動させて、狙った被写体の位置(深さ)に置く、ということなのです。

具体例。

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今ピント面は、赤い列車と黒い列車の上にあります。赤い列車と黒い列車はピント面上に平行に並んでいるので、どちらにもピントが合っています。図で表すとこういうイメージです。

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では、ピント面を奥に移動させてみます。

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ピント面は一番奥の緑の列車の上にあります。他の列車は全てピントから外れています。センサーに平行なピント面上には緑の列車しかないのです。

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重要なポイントは、カメラと被写体の配置がこうなっている時、「赤い列車と黒い列車には必ず同時にピントが合う」ということです。ピントは点ではなく、面で合うのです。

ちなみにこれは、撮った写真を加工して自然なボケを作り出すのが難しい理由でもあります。二次元情報に変換された写真では奥行きに関する情報は失われていますから、「どれがピント面上の物体なのか」を判断するのは難しいのです。

 

2. 被写界深度と「ボケる」

さて、ピント面の前後には、ピントが合っているように見えるエリアがあります。このエリアを「被写界深度」と呼びます。このエリアから外れた被写体は、「ピントが外れる」=「ボケる」という状態になるわけです。もう一度上の例:

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この写真において、被写界深度は赤・黒列車の前後の狭い範囲に留まっています。他の列車は深度から外れ、ボケて見えることになります。

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さて、この被写界深度の「深さ」は、ピントを合わせるのとは別の方法でコントロールします。その一つが「レンズを絞る」です。絞り優先モードもしくはマニュアルモードで、F値を大きくする=絞る事によって、被写界深度は深くなり、より広い範囲にピントが合うことになります。上の写真はf/2ですが、ピント面はそのままにして、f/11まで絞るとこのようになります:

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被写界深度が深くなり、茶色い列車はピントが合って見えます。今、ピントが合って見える範囲は青い列車の直前まで来ています:

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これをさらにf/22まで絞りましょう。

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被写界深度はさらに深くなり、青い列車まで入っています。

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まとめると、「絞ることによって被写界深度は深くなり、より広い奥行きの範囲に対してピントが合う(合って見える)ようになる」となります。

 

3. 被写界深度/ボケを左右する要素

深度/ボケを決めるのは絞りだけではありません。関係する要素をまとめます。

(1) 絞り値が小さい → 深度が浅い / ボケる
例:f/5.6よりf/1.4の方がボケる

(2) レンズの焦点距離が長い → 深度が浅い / ボケる
例:24mmより85mmの方がボケる

(3) 被写体とカメラの距離が短い → 深度が浅い / ボケる
例:2m先の被写体より45cm先の被写体の方がボケる

スマホのカメラがボケないのは、撮像素子が小さいためにレンズの焦点距離が短くなり(iPhone5sで4.1mmだそうです)、結果として被写界深度が深くなるからです。

 

4. 写真を撮る = 奥行きを切り取る

一眼レフカメラ(あと最近の高級コンデジ)は、撮影者が被写界深度をコントロールする手段を与えてくれます。そういう機械を使って写真を撮るということは、「自分の前に広がる三次元空間の奥行きの中で、どこからどこまでを切り取るのか」という選択をすることでもあるんですね。それはつまり、「どこにピント面を置くのか」と、「どこまでを被写界深度に含めるのか」という二つの問題に答える、ということです。後者については、どれだけ絞るか、ズームレンズならズームインするのかズームアウトするのか、被写体に寄るのか離れるのか、という選択肢の組み合わせで深度を決めることになります。

 

5. だから面白い

写真における「構図」とは、普通タテヨコの範囲をどのように・どこまで切り取るか、という問題です。しかし、被写界深度を含めて考えると、これに奥行きをどこまで切り取るか、という問題が加わります。すっげえ複雑になります。でも、だからこそ面白いと思うんですね。写真は一概に深度を浅くすればいい=ボケればいい、という問題でもありません。絞ったり開いたり、寄ったり離れたりの試行錯誤で、おおっと思う写真が撮れた時が楽しいのです。