bluelines

写真をメインに、いろいろログ。

写真初心者と単焦点レンズ

 カメラの交換用レンズには、大きく「単焦点レンズ」と「ズームレンズ」があります。ズームレンズはレンズを操作して被写体に寄ったり引いたりできるやつですね。対して単焦点はズームが出来ず、寄るのも引くのも自分で動くしかない、ってやつです。

 「初心者が写真を練習するなら単焦点」という話は昔からあります。で、「いや初心者ならズームでしょ」っていう人もいます。まあぶっちゃけ両方持ってればいいんじゃないの、とは思うんですけど、僕が自分の経験として、単焦点レンズを使うことで勉強になったことについて書きたいと思います。

 

 単焦点って、根本的には不便です。単焦点レンズ一本だけつけて散歩に行ったりしてると、「どうしてもこの被写体をうまいこと写真に収めることができない」ということが起こります。しかし、それを繰り返しているうちにだんだん、「どんなものならこのレンズで撮れるのか」がわかってきます。それは要するに、画角の感覚が身につく、ということになるんだと思うのです。

 とりあえず具体例。同じ場所にある同じものを、フレーム内で大体同じ大きさになるように、焦点距離の違うレンズで撮った写真を並べました。

f:id:gorotaku:20140830172936j:plain

 25mmというのは、標準ズームレンズの広角端、85mmは望遠端に大体近い焦点距離です。この二つの写真、一目瞭然で全然違うものであることがわかると思います。同じ被写体を同じ大きさになるように撮っているのに、画角によって写真は変わってくるのです。

 一つ目の違いは、背景がどれぐらい入ってくるか、です。広角側では画角が広く、広い範囲で背景がフレームに入ってくるのに対して、望遠側ではずっと狭い範囲しか写りません。

 二つ目の違いは、遠近感です。25mmに対して、85mmの写真は後ろの本棚がぬいぐるみの近くにあるように見えると思います。広角は「パースペクティヴ効果」といって、遠近感を強調する(遠くの物がより遠くに見える)のです。それに対して望遠は「圧縮効果」といって、遠近感を圧縮してしまいます。広角で撮った写真は、しろねこがくろねこの斜め後ろに引いているように見えますが、望遠側の写真では横に並んでいるように見えます。これも上記の効果の結果です。

 そして三つ目の違いが、ボケの量です。上の写真は同じ絞り値で撮っていますが、広角側よりも望遠側のほうが背景のボケ量が大きくなっています。

 この画角による違いって、僕はズームレンズを使っている間は意識できませんでした。まずは自分が立ってカメラを構えた位置があって、そこから自分が動くのではなくズームしていました。画角を意識せず、自分が撮りたいものを撮りたい大きさにできればOK。そういう感じでした。

 で、単焦点レンズを何本か入手して、ある日は50mmで撮った被写体を28mmで撮ったりするようになります。その写真を並べてびっくりします。こんなに違うのか、と。とたんにズームレンズがものすごく難しく感じるようになりました。単焦点は、被写体に対して「自分が近づく」「離れる」「諦める」しか選択肢がありませんが、ズームだと「ズームイン・ズームアウトする」が加わってしまうのです。「ズームインしつつ離れる」べきか、「ズームアウトしつつ近づく」べきか。どの画角で撮ればいいのか、最良の選択肢が見つけられる気がしなくなりました。

 で、僕はその後ずっと単焦点ばかりです。ここに来て随分画角感覚が身に付いてきたというか、「この被写体なら◯◯mm」みたいなのが浮かぶようになってきました。こうなると今度はズームレンズがすごく便利に感じられるんですが、最初からずっとズームだったら、この感覚を持つとこに行かなかったのではないか、と思うのです。

 まあ、この記事にあるように、「ズームリングをテープで固定」しても同じ練習はできると思います。いずれにしても大切なのは、しくみを理解することなんだと思います。単焦点を使って自分に縛りをかけるというのは、「レンズの焦点距離と画角」が写真にどういう影響を与えるのかを理解するのにとても有効だと思うのです。